医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.212、213】

今月は歯科医師の過失が争点になった判決を2件ご紹介します。

No.212の事案では、亡くなった歯科医師が歯科医師賠償責任保険契約を締結していた損害保険会社が補助参加人として訴訟に参加しています。

そして、損害保険会社は、患者が抜歯から他院受診までに期間があることなどを指摘して、本件抜歯によって下顎骨骨折が生じたことを争いましたが、裁判所は、患者は歯科医師に徐々に治る旨言われていたため、これを信じて痛み等を我慢して静養していたのであって、いわゆる親知らずの抜歯によって下顎骨骨折が生じるとは通常考えないであろうことに照らせば、このような患者の行動も特に不自然とはいえないとして、損害保険会社の主張を採用しませんでした。

No.213の事案では、歯科医師の過失と歯痛との因果関係は否定しましたが、不適切な治療の継続による患者の精神的苦痛等についての損害賠償責任を認めました。また、患者は歯科医師に対して、患者の歯のスタディモデルの所有権が患者に帰属することや、診療契約上の義務として、スタディモデルの引き渡しも請求しましたが、裁判所は、患者が治療費を支払っているとしても、それは歯科治療に対する対価であり、スタディモデルの制作費も含まれていると認めるに足りる証拠は無いとし、診療契約上も引き渡しについて合意をしたと認めるに足りる証拠は無いとして引き渡しを認めませんでした。

両判決とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2012年4月 6日
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